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『死墓島の殺人』大村友貴美:読書感想

『角川書店』
 横溝正史ミステリ大賞受賞第一作

 過疎化が進む孤島で起こった連続殺人事件。
四百年前の伝説の惨劇が、現代に蘇る!

 「21世紀の横溝正史」と絶賛された著者の真骨頂!



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あらすじ
 岩手県の小島、偲母島。この島の断崖で、島長の海洞貞次の他殺死体が発見された。捜査のために偲母島に渡った藤田警部補は、この島が地元の人々から「死墓島」という不吉な名前で呼ばれていることを知る。その名の由来は、島に残されたおびただしい数の墓石だった。なぜこんなにも多くの墓石が残されているのか?
閉鎖的な島民たちを相手に捜査を開始した藤田は、次第に死墓島の裏の歴史を知ることになる。

 横溝正史の正当な後継者が描く、傑作長編推理!




 ↓ 以下、ネタバレあり。





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     『獄門島』と『悪魔の手毬唄』が思い浮かびました。
    殺人三部作では、この作品が一番横溝正史ぽくって面白かったです。

     余所者の保健婦が、地元民の男に助けて貰っての犯行かと思っちゃいました。実は、島長の海洞貞次に酷い目にあわされて島を追われた村民の娘が復讐しに帰って来たんじゃないかと。

     それがデビュー作の『首挽村の殺人』に続いて、余所者のメンヘラ女のその場しのぎの嘘に、平和に暮らしていた地元民が引っ掻き回されたと言うパターンでした。

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    p240
    「わたしは強くありませんよ」
     淑乃は、柔らかな声音で答えた。
    「もう二十年になりますけど、夫が海で亡くなりました。モウレン船が出るかもしれない、会えるかもしれないと……わざわざ霧の日に海に出たこともありました。今から考えるとばかみたいですけど」淑乃は、さびしそうに笑った。「仏が浜に打ち上げられるかもと、毎日のように通ったこともありました。そのうち、期待ばかり裏切られるから、行くのもいやになって……そうこうしているうちに夫が亡くなったという事実が受け止められるようになりました。亡くなったというより、そばにいないという事実を認めたということかしら?」
     淑乃は、藤田に微笑みかけた。
    「孤独は人を蝕みます。大勢といても孤独だと思ったら、それは一人と同じ。むしろ周りに誰もいない孤独より暗く、陰鬱かもしれません。自分を一人にしないこと。わたしはそう思ってるんですよ。こうして誰かと会って、話をして、一人だと萎える時も人のなにげない一言や人の芯の強さに触れてがんばろうと思ったり、見ず知らずの人から勇気をもらったりしますからね。知らず知らずのうちに、人から影響を受けるんです……いいことも悪いことも」




     ↑ この墓守の旅館の女将も、犯人じゃないかと睨んだ一人です。島長の海洞貞次に夫を殺されて、やはり地元民の男の力を借りて復讐したんじゃないかと。それとも『悪魔の手毬唄』的な動機でとか。

     定次の妻、光子も妻のプライドを持っていた。仲良さそうに振舞っていても、夫の浮気の相談は、淑乃にはしなかった。夫の最期に恨み言言ってやりたかった。だから、夫が最期に会っていた女性を知りたい。その相手が、夫が若い頃求婚していた淑乃だったら嫌! なかなか情念の深い母と違い、息子定智は淡泊。父定次とも関係を持っていると知ったら、瞳のことスパッと切れたからイイよね。その分、椋介に災いが。


    p359
    『わたしは孤独の中にいる
     わたしは想われているのか?
     わたしは孤独の中にいる
     わたしの魂はさまよい、かの女をさがす
     かの女が現れたなら、
     遠く離れていようと求め続けるだろう
     いったい誰がわたしを想っているのか?
     ここから救い出して欲しい
     わたし一人でなんともならないのだから……』『想婦憐』


     
    偲母島←死墓島←思慕島

    p353
     椋介は、両手で顔を覆い、声を搾り出した。
    「生きていれば会えたかもしれない……瞳さんが島に来たかもしれない。せめて声くらい聞けたかもしれないのに。生きていたら、今なにしてるのか、元気でやってるのか、想像して……想うことができた……それだけで幸せな気持ちになれたのに。それさえも、壊した!」
     椋介の指の間から涙が伝わった。
    「報われなくても、想う人がいるだけで……たとえ会えなくても、遠く離れていても、いるだけで、それだけでよかったのに!」




     第一の事件を目撃されたと早トチリして早妃を殺しちゃった瞳に、イイように使われただけの椋介、気の毒。瞳の言うことを信じストーカーと間違えて、恐怖心からおじさんを殴り殺しちゃうなんて、ついてない。
     そうか。時化なのに、観光客を乗せてサップ船を出してたことが怪しかったのに、藤田警部補のように不審に思いませんでした。そこ考えると、時化なのに、観光客に目撃して貰って自分のアリバイづくりの為に、船を出すなんてヒドイ! なんて自分勝手と思いました。鈴木さんの奥さんが船酔いしたのを見て心配そうにしてたのは、遺体を見つけるの見逃されそうだったから? と思いました。時化だから酔ったんだろうに!


     それにしても皮肉、藤田と有川の刑事を最初に迎えに来たのは椋介で。瞳が早妃を薬で眠らせた後、海で始末しようと、借りようとしていた車は、警察のお偉い方を乗せた後だったとは。


     巡航船に、有原と二人だけ置き去りにされたこと藤田恨みに思ったようだけど、続けて遅刻するあんたが悪い。むしろコンビ組まされて巻き込まれた有原の方が気の毒。次に来るのが一週間後とか無人島じゃないんだから、何もそう恨みに思わなくても。聞き込みの途中なんだし、夜を一緒に過ごした方が島民の口も軽くなるじゃない? むしろ何時でも一泊出来る位の気持ちで捜査にあたりなよ。藤田警部補、けっこう刑事としての度量小さいな、と思いました。
    『首挽村の殺人』で空気読まなかったせいで左遷された先が、海岸付近で船酔いし易い体質なのは、気の毒だとは思いましたが。


     そんな藤田警部補、歳を7つも誤魔化し夫の便りを父と偽っていた、瞳の心情すごく理解したみたい。私には、子供産んでも妻にも母親にも大人にもなろうとしなかった瞳が理解出来ません。このその場しのぎの生き方危うさが魅力であり、初対面で打ち解けても人が直ぐ去って行く脆さもここにあるんでしょうね。そりゃ東京に居てもつまんない、なら娯楽無い島じゃなおさらだろう。買い物依存症だったみたいですね。買っても開封してない箱が山積みみたいだったから。藤田警部補は、誰か寄り添える人間が居たら、瞳も変れたんではないのか? って、夫を責めるように言ったけど、付き合えないよ! こんな人。まず、自分を反省するとこから始めてくれないと。面倒臭いからと放置しさっさと離婚しないと、問題起こすよ、こう言うひと。

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    p214
    「でも、都会の暮らしは、地方から出て仕事をする、あるいは求める人に楽とはいえない暮らしを強いてますよ。家賃の高い都会は暮らしやすい環境とはいえないでしょう? 生活費の大半が家賃に取られるわけで、正社員での雇用は控えられて、賃金も低く抑えられた場合、生活は非常に苦しい。だから、ホームレスや生活保護に頼り人まで出てくる。都会の給料は高いといわれますが、家賃が必要な暮らしをする人なら、年間約百万円が家賃に消えるわけで、都会で三百万円の年収でも、地方の実家住まいの二百万円と実質は同じですからね。都会と地方の格差ばかりか、都会での格差も無視できなくなってる。さらにです、日本という社会は最初の就職につまづくと、ステップアップどころか待遇はダウンしていくばかりで、這い上がりが難しい。そうは思われませんか?」
     藤田は、公務員のせいか、民間の就職にまつわる環境について、人づてや捜査で聞き知るだけで、頭ではなんとなく理解できていても実感は薄かった。
    「僕はね、地方の人口流出や過疎は、都会に関係ないように思えても、都市部への人口の流れを考えると、無視できない社会問題だと思うんですよ」




     初登場した一方井、この作品では挨拶程度で目障りってほどじゃありませんでしたね。
    藤田を相手に現代社会の問題を熱く語るところが、次作の『霧の塔の殺人』につながるんですね。


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    tag : 死墓島の殺人 大村友貴美 横溝正史 孤島 処刑場 墓守 巡航船 サッパ船 牢穴 断崖

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    Author:唯
     読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
    と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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