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『霧の塔の殺人』大村友貴美:読書感想

 

内容『角川書店』
 就職難と格差に喘ぐ地方社会。
歪みが生んだ連続惨殺事件の謎に、温厚実直な実力派刑事・藤田警部補と、29歳、普段はクールな若手新聞記者・一方井将棋が迫る!

 現代の横溝正史と絶賛される著者による新たなる到達点

『首狩村の殺人』『死墓島の殺人』殺人シリーズ三部作。



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あらすじ
 岩手県の太平洋岸にある小金牛村から、県庁所在地である盛岡市まで向かうには、いくつかの峠を越えなければならない。その峠の一つ、雲上峠にある展望台の朽ちかけたベンチに、男性の生首が置かれていた。被害者は年商総額三十億にのぼる食品加工会社などを経営する実業家。地元の名士を残忍なやり方で殺害したのは誰なのか?
 次なる惨殺遺体も発見され、海辺の村が騒然とするなか、さらには岩手県選出の国会議員を殺害するという予告が。全国へ厳戒態勢が広がる劇場型犯罪へと発展したこの事件は、思わぬ方向に急展開をみせて……。




 受賞した作品では無いけど、この作品なら横溝正史賞とったのも納得出来ます。先に読んだ『奇妙な遺産』とガラリ雰囲気が違う。


 ↓ 以下、ネタバレあり。





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    p146
    「ご近所トラブル? そんな……」
     くだらないことで……と言いかけたけれど、民事裁判を思い出し、はたと一方井は口を閉じた。
     すかさず若杉が、「一方井、ご近所トラブルはばかにできないぞ」と畳みかけてきた。「敷地の境界線やゴミ置き場、騒音で裁判が起こされるくらいなんだから。それに感情的にこじれれば、包丁振り回す、散弾銃ぶっばなす、車で隣の玄関に突っ込む、ショベルカーで家壊す、隣人を車で轢く。器物損壊、障害、殺人ありだから。親族ならなおさらこじれるもんよ」
    「怖ぇ!」どろどろ過ぎる。「僕はどっちかっていうと、そういうの、苦手っすね。人生サクッとサラッといかないと」
     その時、新聞の切り抜きに生まれているニュースリリースの存在に気づいた。すっかり忘れていた。
     一方井は、その内容を黙読した。今晩の鬼越薪能の案内である。
    「一方井……甘いな」若杉の不気味な笑いが電話口から聞こえた。「今はヘビーでウェットが嫌われて、お前みたいなサクッとサラッとが好まれるけど、人間の本質なんていつの時代も変わらないもんさ。表層が変化して見えるだけで。ライトな風潮に合わせて暗さを押し殺して振舞ってたり、暗い側面を見ないようにしている。でも、人間から暗部が消えることはない。ネットの炎上やまつりがいい例だ。匿名で特定の人間を攻撃する。自分は安全圏にいたまま相手を追い詰める。社会的には普通に暮らしてるんだろうにネットに向かうと日常抑え込んでる攻撃性を剥き出しにする。あの言葉の暴力には寒気が……」



     そうですね。人間の本質なんて、ポルノグラフィティの『アポロ』の歌詞のように、どんなに文明が進んでも変わってない、って気が歴史ドラマ観るとします。

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    p172
    「突然、後ろに立ってたの。近づかないように言ったはずなのに。逃げようとしたら立ちふさがれて……腕を掴むから」安海は、そこで手首を擦った。「とっさに箸入れを投げつけたの。そしたら……」
     安海は、一人だったらどうなっていたか……ぞっとした。そして悟った。成一になにを言っても無駄だと。成一にとって、他人の感情は関係ない。重要なのは自分の欲求であり、意志なのだと。




     こ、怖い! 突然、ストーカーと化した幼馴染み。
    現在の彼女に恋してと言うより、子供の頃は好かった……みたいな郷愁のせいみたいだし。付き纏われる方としては、何が何だか解らず困惑大迷惑。それでも昔馴染みの仲だし、成一の家は村長もしてた名家だし、両親のこと考えると公にすることも出来ない。安海が期待してたように東京に戻ったら、おさまっていたのでしょうか?


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    p323
     柿沢は、そこで背後にあった新聞ラックから一紙取り上げて、社会面を開き、右手の人差し指で叩いた。二十代と三十代の若年層の自殺が増加し、動機として就職失敗が増えていることを書いた記事である。
    「自由、平等の理念だけが先行する情報化社会で、顕在化していた問題がこの不況で一気に顕在化したんだわね」
    「顕在化……すか?」
    「犯罪は、時代と社会を映す鏡っていうでしょ?」柿沢は、ももに肘をかけて、前のめりになった。
    「成一の動機も就職失敗にあたるんじゃないかしら? 日本は、一度ある軌道からはずれると、そこに戻る、あるいは入り込むのが難しい社会だから。さまざまな職業形態があっていいといいながら、大手の終身雇用の年功序列は、雇用の流動化を受け入れると、給与形態が崩れてしまう。今の日本はどちらもありだけど、転職すれば必ずしも年収が上がるとは限らない。むしろ転職をするたび、給料は下がるのが現状よね。近頃は右肩上がりだった年収もおさえられて、昇給どころか下がってるみたいだけど、転職したら最後、気がつけば、終身雇用と非正規雇用を含めた転職組で、同年齢で年収の差が出る社会になってると思うわけよ」



     ほんとに。何で日本は新卒重視なんでしょう? 中途採用を嫌がるの? 同じ仕事をしながら差をつけるのでしょう? なんか無駄なことしてるなぁ~って思います。非正規雇用のまんまだと持ち家どころか結婚も出来ない、貯金も出来ない、病気も怪我も出来ない
    ギリギリな生活を強いられる。ほんとどうにかしてよ!

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     国会議員の運命も左右出来る程の財力を持つ村の権力者。祟りがあると言われてる場。村をリヤカーで行商する老婆。何やら『悪魔の子守唄』を連想するような、横溝正史的なドロドロとしたとこは面白かったです。それでも、社会派は好きでは無いので、成一が両親殺害してから、興味が薄れました。
    ――いや、ゼッタイ、犯人はあの老婆だよ! と決めつけていましたから。


     29歳で不自然な位チャラく見せかけてる、一方井の話し方接し方が嫌いでした。皆が大変な時にサボっているのに、自己顕示欲の強い、刑事も嫌いでした。


     犯人に犯行を唆した国会議員、罪に問えるのでしょうか? 警察の上が圧力かけてもみ消しそう。元村長鬼怒川正行は、息子を貶められ殺される位なら、国会議員の誘いに乗って、恨みのある鬼怒川義勝を追い落とせば良かったのでしょうか? 村長をしていた父は人から頼りにされる善人なのに、一人息子は駄目。なのに非道の限りを尽くした悪党の孫は、三人共出来がイイってのが皮肉。

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    tag : 霧の塔の殺人 大村友貴美 横溝正史 新聞記者 地元の名士 惨殺遺体 薪能 金鉱

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    Author:唯
     読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
    と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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