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『誰がカインを殺したか』篠田真由美:読書感想


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あらすじ『講談社』


 弟アベルに嫉妬した兄カインは、彼を殺して骸を野に埋め、隠蔽を企てた。『旧約聖書』に描かれた人類最初の殺人事件。その物語が反転するとき、新たなる構図が浮かび上がる。真に罪ある者は誰だったのか。我らが桜井京介が見出した答えとは。
 そしてまた巡り来る春、裏切りの痛みを乗り越え少女は明日を見る。庄司ゆきの成長物語もゆるやかに進行中です。――篠田真由美

「君は僕になにを望む?」
桜井京介は、そう尋ねた。

 その声は、昏い想念の迷宮から救い出すアリアドネの糸。





 ↓ 以下、ネタバレあり。




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    1.桜井京介と≪日常の謎≫


     私も日常の謎とか、そそられません。
    コージーミステリも読んでみたけど、物足りなくて。
    日常の謎ならミステリでなくても、普通小説でもイイわけで。


     中学生の女の子が一人で心配なのは、深夜バスか? 山散策か?

     そんなに行きたくて、そんなに心配なら、叔母さん一緒に行けば良いのに。ゆきがスケッチしている間は遠くから観察しれれば。

     桜井京介案外心配性、過保護。
    見張り役、カズミ先生がやりそうなのに。

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    2.柘榴の実、三粒


     ゆきと母親の仲が羨ましい位ドライ。


    p71
    「本音は口に出来ない。そんなとき人はまず自分を騙します。嘘でないと思いこめれば、そのことばを口にするのが楽に、自然になる。つまり、上手な嘘になる。場合によっては自分の言葉に影響されて、それが嘘でなくなることもある。その願いをこめて、そうありたいと思うことばを口にすることもあるでしょう。相手の聞きたいことを口にしている、その努力を組んで欲しいと願いながら。だが逆に些細なきっかけで、自分にも隠してきた本音が、嘘の殻を破って吹き出てしまうこともある。そうなるともう一度それを忘れて、自分を騙すことは難しいでしょう」



     
     「ウザイ! ムカつく!」なんて声に出せれば、反抗出来れば、反対されてもやりたいことをやる! って言い切れれば良いのだけど。抑えて合わせて我慢して、そして不満が地下に堪って憎しみに変わる。母殺しのアリバイに使われそうになった、ゆきが気の毒。しかし、先輩の意図を知っても、桜井京介の問いかけに、先輩を助けてあげてと言えるゆきは強いなぁ~


    p106
    「日色南にとっては、ペルセポネの叛乱は長く温め続けた暗い夢想であったのだと思います。嘘とまことの間で揺れながら、次第に膨らむ母への怒りと苛立ちをなだめるために、顔のない父を仮想的な指導者に、自由を手に入れることを夢見た。しかし長い待機のときを終らせて、敢えて実行に踏み切ったその契機は」
    「庄司、ゆき」
     乾いた声があたしの名をつぶやく。
    「あの子は自由。あの子は強い。あの子がねたましい」




     その分、ゆきに惹かれていたと思う。
    利用するばかりで付き合っていた訳でも無いと思う。



    p51
     「日色夫人は、子供を育てるより自分のしたいことを選んだ庄司君の母親とは、およそ対照的な人物のようでした。自宅にいてもフルメイクに、目の覚めるような薔薇色のニットワンピース、真珠のロングネックレス。少し太めだが充分美人な堂々たるマダムで、豊かな黒髪をポンパドール風に結い上げた、でも顔は天平の吉祥天女似だったと庄司君が話してくれました。」




     入院中の本人を前に、そこまで言う、桜井京介
    と思っていたら……


    p107
    「先輩、大丈夫だと思う?」
    「たぶん」
    「本当に、お母さんが憑りついたのかと思った」
    「母を殺す娘ではなく、娘に死なれて取り残される母である方がまだいいと、彼女はそう望んだのだろう」
    「自分で自分を騙そうとした?」
    「そうだね」
    「でもそんなこと、出来るわけないよ。自分が自分でないなんて、いくら思い込もうとしても。本気でそうなれたと思うなら、それは頭が壊れちゃったことで」
    「そう」
    「やっぱりよくわかんない。殺そうとしたのに。だからあんな計画立てたんでしょ? 服脱いで、自分で自分に手錠までかけて。なのになぜ? お母さんを殺したいか殺したくないか、先輩の本当の気持ちはどっちだったの? なにが嘘でなにが本当か、境目なんてあるの?」



     本人じゃなかった。娘に、母のことを言ってたんだ。
    楳図かずおの『洗礼』思い出しました。
     殺したくて、殺したくなかった。殺さなくては、と思いながら殺したくなかった。


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    3.「誰がカインを殺したか?」

    p137
    「けれど、家族の有り様ってそれぞれですよね。なにも決まり切った型に嵌める必要は、ないんじゃありませんか? 子供の身でえらそうな口を利くつもりはありませんが、ぼくは別段自分が不幸だと思ったことはないんです。恵まれているのは物質的にだけでなく、精神的にもだと感じていました。父がぼくを顧みないのは、ぼくがまだ無力な子供だからに過ぎない。高名で偉大な父、その父を助ける頼もしいふたりの兄。いつかぼくも兄ほどの大人になれば、父の元に行くことを許される。いまはその日のために、一生懸命勉強しようと思っていました。母もそういうぼくの思いを肯定してくれていました」
     家族というものを型に嵌めて、そこから逸脱していれば不幸だと決めつける。それがナンセンスなことはいうまでもない。勤め人の父親に専業主婦の母親、子供ふたりといった家族モデルは、すでに数的なマジョリティでさえなくなっている。そしてぼく自身、そうしたモデルに近い家族の中で成長したとはいえない身だ。だからといって、おまえは不幸だったろうなどといわれれば、絶対に笑って聞き流しはしない。




     一時期、言われていたらしい欠損家族と言う言葉を思い出しました。
    この少年の家は、両親揃っていたけど、別居。


    p214
     だがふいに、暴れていた彼の手足から力が抜けた。ぼくの手をすり抜けるようにして、床に座りこんでしまう。両手で頭を抱え、小さく小さく手足を縮めて、石ころのように閉じようとしている彼。身体が逃げられないなら、その中に閉じこもって、どこまでも落ちていこうとする。まるで昔のぼくみたいに。そう、君は昔のぼくだ。現実が悪意の牙を剥いてきて耐えられないほどひどいときは、逃げ場は自分の中にしかないもの。わかるよ。でも、頼むからそっちには行かないで。




     ゆきはカズミ先生のことを、天然とか天使だとか思ってるみたいだったけど、少年のような昏い記憶があるみたい。そこを、桜井京介に助けられたよう。そうだよね。天使はカウンセラーになれないよ。


    p210
     人間は、信じたくないことには容易く目をつぶれるものだ。一度定着した輝かしい名声と、それから放たれるオーラに対して、否認の声を上げることは難しい。誰より真っ先に彼の衰えに気づいていいはずの兄弟と設計事務所の所員たちも、彼らの神を否定してその王国を覆すより、表面を取り繕っての現状維持を望んだ。ただひとり、彼の足下に踏みつけられ、三年間の強いられた生活に疲弊し尽くして、髪はすべて白く変わり、顔には皺が刻まれて、門越しに眺めた京介の目にさえ三十代とは到底見えなかったという美智だけが、その偽りの王国を打ち砕いたのだ。




     もっと早く、然るべき方法で、夫の王国打ち砕けていたのなら、息子を悲しませることも無かったのに。失踪に見せかけて、中学生の息子の前から姿を消せ、なんて。そんなこと言われた時点で離婚請求してやれば良かったのに。言いつけに従わないだけでも。年老いて出来た子が実の息子じゃない、なんて。そんなスキャンダル、夫の方が怖かったんじゃないの。上の息子達も洗脳されたように、動かされていたし、もう言いつけ通りにしなきゃって思い込んだら、そこから抜け出せないのか。誰か外の他人に相談出来たら、視方変えれたかもしれないのに。

     これどうなんだろう? あなたの子よ、って結婚迫ったら詐欺なんだろうか? 妻慰謝料貰えないどころか、夫の方から請求されるのかなぁ~?

     血の繋がって居なかった少年に、父と兄達の財産はイカナイのだろうか? 相続権が回って来た親戚に、訴えられなきゃ大丈夫なんじゃないの?


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    4.「コックリさんと喫煙と十四歳の研究」

    p242
    「え、別に平気だよ? うちの学校の子たちって、松が丘みたいに抑圧されてないからかな、あたしが全面否定したらびっくりはされたけど、みんなが指がくっつくの試してみたりして、科学のディベートみたいで面白かった。でもクラスの男子に、おまえあれは無粋だろっていわれちゃった。ああいうのは雑誌の後ろにある星占いのページと一緒で、誰も真剣に信じてるわけじゃない、女子同士の、コミュニケーションを兼ねたお遊戯みたいなもんなんだから、それをわざわざ口に出して否定する方が野暮だって」
    「ずいぶん醒めた見解の持ち主だな」
    「うん。クラス委員やってるくらいだから、あたしみたいに浮いてはいないけど、本音は別なんだって。俺は庄司ほど正直じゃないから、適当に合わせて誤魔化しているんだ。自分の素を出すなら場を選ばなきゃ駄目で、委員とか率先して引き受けるのも一種の処世術だよって、平気な顔していうやつ。済ましてれば優等生なのに、振り向くとベロ出してる、みたいなひねくれたとこが面白くて、最近よく話すんだ」
    「なるほど」
    「それとあたしってそういう、女子のお約束みたいなことをわかってない場合があるから、気をつけないとって思ったけど、たぶんそのせいもあってどっちかっていうと男子の方が話しやすいんだ」



     そうそう。コックリさんの信憑性質すより、もっと楽しいことあるよって示す方が良かったと思う。


    p248
    「でもさ、人間の関係ってそういう部分も、絶対含まれてるものじゃない?」
    「利用する、される、そんな部分が?」
    「そう。お返しを期待しない好意だけがいいものだ、とはいえないでしょ? なにかしてあげたり、してもらったり、して欲しいから仲良くなったり、してもらうだけじゃ悪いからって、今度はお返ししたり。家族の中でだっていくらかはそういうところがあるんで、そんなのは不純だって否定していったら、あんまりなにも残らなくない? あ、でも、あたしは桜井さんたちに、一方的にしてもらうだけだけど」




     日色先輩に利用された経験を持つゆき。それでもなお、利用されてもイイと思える、生徒に出会えた。それは幸福なことじゃないかな。


    p286
     僕はつい苦笑を漏らし、
    「もう、桜井さんたっらまた、そんな意地悪な顔して笑う」
     そんなつもりはなかったのだが、大声で叱られてしまう。
    「いいでしょ、別に。あたしが心の中でそう信じたいだけなんだから、誰に迷惑かけるわけでもないんだからッ」
     そうだね。人は自ら望むものを信じ頼る自由がある。信を共にすることは出来なくとも、その自由は守らなくてはならない。自分自身を含めて、人を傷つけない限りは。




     うん、守ってあげて欲しい。あなたにとってはとるに足らないことでも、私にとっては宝かもしれないのだから。


     あれ、中学生でも脱法ドラッグ友達にまで飲ませると、施設行きなの?
    そりゃ、学校は退学になると思うよ。

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    ジャンル : 小説・文学

    tag : 誰がカインを殺したか 篠田真由美 桜井京介 建築探偵 庄司ゆき コックリさんと喫煙と14歳の研究 柘榴の実、三粒 スクールカウンセラー

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    Author:唯
     読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
    と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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