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『眩談』京極夏彦:読書感想

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『メディアファクトリー』
虚実は綯い交ぜになって物語になる
視覚が歪み、記憶が混濁し、暗闇が臭いたち、眩暈をよぶ。
京極小説の本領を味わえる。怪しき短編集




「と」「り」のフォントがかすれて不気味。
六年って何か意味あるんでしょうか?


 ↓ 以下、ネタバレあり。




     

    1.便所の神様――匂いに眩む
     僕が住む木造の平屋は少し臭い。廊下の先の暗闇の中を手探りで電気を探した。心許ない灯りが便所の扉を照らしだす。便所は汚くて臭くて怖い。




    p28
     僕は便所の蓋や塵紙や茶色の瓶を見ていてもそんなことを考えてしまうし、ロールシャッハテストのような染みが描かれた汚らしい壁を見ていても同じようなことを考えてしまうので、この便所の中で唯一質の違ったものである、洗剤の緑色のボトルを見るようにしています。
     この洗剤が、また凄い刺激臭なのです。キャップを開けると、鼻が刺されるみたいです。
     きっと、罪業や悪念や因縁や煩悩に打ち勝つための強い劇薬なのでしょう。


     ↑ これって便器にメッセージを残せる程の漂白力を謳っている、あの洗剤のことでしょうか?


     冒頭から延々と語られる、水洗になる前の便所。
    これって怪談、いや眩談? 
     知ってますから! そりゃ、臭い暗い汚い怖いでしたよ。
    おまけに家の猫は、使用中に覗きに来たりしましたから。
     そうそう、あの男子便器用の小玉防臭剤? 必要だったのかなぁ~?

     穴の底には、肉片とか落ちて居たんじゃないんですか……


     赤い紙か青い紙かの怪談も、洋式や水洗トイレじゃ生まれなかったでしょうね。 

     


     2.歪み観音――幻視に眩む
     ある日、電信柱が曲がっていた。ペンケースからシャーペンも、箸の先端や風呂の水面までもが、ぐにゃりと歪んでいる。そして、母親の顔も。




    p64
     観音様は眼を細めた。ほんとうに仏像に似ている。
    「親が歪み家人が歪み思い人が歪み、世が歪み。それは普く己の心の歪み也。それもこれも、親に疎まれ家人に厭われ、思い人には嫌われておるというのに、その現を見ずに嘘を観て生きておる故。汝は嘘を観て暮らしておったのじゃ」
    「は?」何を言ってるのだろうこの人は。
    「汝は親の顔も家人の顔も想い人の顔もまともに見たことはなかろう。ほんとうは誰の顔も知らぬのであろうなあ。汝は独りだ。ずっと独りだ。何も見ず、何も知らずに生きているだけだ。汝は、世の中を世界を現実を、一度も見たことがないのであろうなあ。だから世がどんなものなのか知らぬのだ。これが現実也」
    「ハア?」
    「汝が最後まで信じておった世界こそ、虚構也」


     
     怖いよ! ある日突然、見慣れた日常が歪んで観えたら……
    今まで信じていた世界が虚構で、歪んで観える世界が現実なんて、そりゃ受け入れたくないよ。最後、自分も歪んで見え、皆と同じになってホッとするって気持、解かるような気がしました。



     3.見世物姥――高揚感に眩む
     村には楽しいことなどない。雪に閉ざされる冬は嫌いだ。しかし、今年は六年に一度の祭りがある。太鼓や笛や鉦が鳴り響き、見世物小屋がやってくる。




     遠藤徹ホラー小説『姉飼(あねかい)』を思い出しました。



     今思うと、昔やってた見世物小屋に居た人は、身障者だったのではないかと思います。映画『エレファントマン』を観て知りました。あれって虐待、人権保護法とかで禁止されるんだろうな。そうしたらその人達の稼ぎが無くなって、かえって首絞めちゃうんじゃないだろうか。行政の手はとても小さくて遠くて、ほんとに必要な人に届く前に、飢え死にさせちゃうんじゃないだろうか。

    images (1)images_20150806222101da3.jpg


     

    4.もくちゃん――人に眩む
     僕たちをみつけたもくちゃんは、友人の亀山を指差して「もくちゃあん」と鳴く。もくちゃんの記憶を見たという亀山は、彼は人殺しなのだと語った。




     これは怖い。どんでんがえしのラストでは、『世にも奇妙な物語』のテーマソングとストリーテーラーの顔が浮かびました。

     p139
     まあ。
     あの人はもくちゃんじゃないからな。
     もくちゃんは、お前だもんな。
     僕は。
     そう思っただけだった。




     ラストの言葉は語り手のものですよね? 随分冷淡な感想。
    語り手が、もくちゃんは、お前だもんな。
    だったわけじゃないですよね?

     


    p108
     どこから見ても不審人物ということになる。
     何か起きてからでは遅いから、何か起きる前に何とかしておくというのが最近の風潮である。その結果、何か起きてしまった時に何もできない――ということになっているような気もするのだが、どうなのだろう。
        中略
     危なっかしいものは取り敢えず排除してしまう――それが正義だと、かなり多くの人が考えているのではないだろうか。
     少し前までは、危なっかしいものであっても排除することはせず、寧ろ上手に共存していくことを考えたものだった。





     近所に住むちょっと困った変な人。
    亀山君にとっては、すっごく困った気味悪い奴だった。それも自分だけにとって。自分にだけ反応し、自分の名を呼び、自分にだけ触れようとする。しかも、それしか言わないものだから、その変な人は周囲から自分の名前で呼ばれるようになってしまう。友達には揶揄される。中学男子にとって耐えられない屈辱でしょう。そんな嫌な奴が隣に住んでいて、避けられない。憂鬱だったよね。
    中学卒業と同時に、そんな家一目散に出て行くかと思ったけど……

     堪らなくなって、もくちゃんがもくちゃんを殺しちゃうのかと予想してました。


     気の毒だなぁ~もくちゃん。
    いったい、杏仁豆腐の何が気に入らなかったんだい?



     5.シリミズさん――家に眩む
     バイトを辞めて貯金が尽きたので実家へ戻った。久しぶりに暮らす秩父の実家が、私は苦手だった。この家では、いつも変なことが起きるのだ。




     これも祟りじゃなく、障り? 
    祟りになるかどうか試してみる度胸は、この家の女達にはなさそうですね。私も無いです。


     シリミズさんにお水をあげなかったら、祟られると仮定してみます。これって引き継ぎをちゃんと出来なかった母に祟られるのか、ちゃんと引き継がなかった娘に祟られるのか、どっちの責任になるのか微妙です。一族そのものに祟るのか。

     お父さん、お兄さん、血の繋がらない兄嫁に処分して貰ったらどうだろう? 古屋を解体する業者さんに処分して貰ったら? 一度、神主さんお坊さんに視て貰ったら? シリミズさんに触れないなら、古屋ごと解体するしかないよね。そうじゃなきゃずっと古屋維持していかなきゃいけないよね~


     全体的にコミカルな感じが可笑しい作品。

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     6.牡鵑(ほととぎす)乃湯――湯に眩む
     アクセスも悪く観光名所もない地に建つ巨大なホテルに行った。外界と遮断された時代遅れの施設を彷徨っていると、屋上の露店風呂に辿り着いた。





     い、いやだぁ~半解凍の蟹のグラタン。冷めた味噌汁位ならまだ我慢出来ますが、好物なんで。
     やる気の無い接客業って嫌ですよね。それならいっそロボットにやって貰った方がイイかも。

     


     タイトルの杜鵑の意味が解かりませんでした。何処かに書いてあったかな?

     友達と来てるのに、一人旅のような行動する主人公に不信感抱いてたら、最初の言葉に戻るんですか。旅館からと言うより温泉から出れなくなるの? 主人公も他人を殺したのでしょうか。




     

    7、けしに坂――記憶に眩む
     親父の法要を抜け出し、寺の裏門から外へ出ると細い坂道があった。傍にいた老婆によると、この坂を上れば忘れていた記憶を思い出せるのだという。



     
     お母さんが亡くなって、普段料理してないだろうお父さんが作ってくれたお弁当。感謝しなきゃいけないんだけど、どうにもイヤ。
    何となく気持ちわかるけど、捨てるのは可哀想。
    人目を避けてでも食べるなら感心、と思っていたら不気味なものが蠢いて――そりゃ食べられないよね。


     お母さん、自殺したのか。だから、嫌で食べれなかったの?


     恩知らず、ってどう意味なの? おばあちゃん。
    こう言う意味わからん問いかけ怪異、どう対処したら良いのか解からず悩みます。どこをどう懺悔しろと言うの? どんな供養して欲しいの?
     嫌なことは忘れたいってのは解かります。
    それでも、お家の奥さんの遺体は消えないよね。

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     8.むかし塚――過去に眩む
     よしこという見窄ぼらしい女子生徒から漫画を借りた。夏休みになり、二学期を迎えた教室に彼女の姿はなかった。僕の手許には汚れた本だけが残った




     昔はアレルギーのことなんか知らずに、多分好き嫌いを失くそうってお国の方針で、居残りさせてでも給食食べさせられたんですよね。私はそれが嫌でした。だって、好き嫌い多くて給食嫌いだったもの。

     楠田枝里子は5時限目にも食い込んだって。嫌いな訳じゃなく、単に咀嚼が遅いだけ。それをほっておいてくれる、先生も生徒も学校も長閑な環境だなぁ~と思いました。給食は無理に食べさせないようになったけど、今の学校にそんなゆとりあるのかな。この子はこう言う子だから、って理解、認識、包容力。


     よしこちゃんは存在したのかなぁ~漫画を返して貰いたいのかなぁ~確かに漫画は存在してて、今も男の子の記憶の中に存在している。

     よしこちゃんに漫画で、コメディを描いていた昔の少女漫画家を思い出しました。土田よしこ。


     
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    tag : 眩談 京極夏彦 便所の神様 もくちゃん 杜鵑乃湯 シリミズさん 見世物姥 けしに坂 むかし塚

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    唯

    Author:唯
     読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
    と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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