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『長い廊下がある家』有栖川有栖:読書感想


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              あらすじ『光文社』
 廃村に踏み迷った大学生の青年は、夜も更けて、ようやく明かりのついた家に辿り着く。
 そこもやはり廃屋だったが、三人の雑誌取材チームが訪れていた。
 この家には幽霊が出るというのだ――。思い違い、錯誤、言い逃れに悪巧み。
 それぞれに歪んだ手掛かりから、臨床犯罪学者・火村英生が導き出す真相とは!?

 二つの邸を繋ぐはずの、長い、長い廊下。
 閉ざされた扉の前で、誰の耳のも届かない叫び声があがる。

 まっすぐな道が、歪んで見えるように。罠に、おちるように。

 悪意ある者の奸計に、火村英生の怜悧な頭脳が挑む。
 
 読書に知的興奮を。切れ味抜群の本格ミステリ傑作集。




 ↓ 以下、ネタバレあり。





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    1.長い廊下がある家

     始めからミステリーって解かってなきゃ、ホラーの方を連想したであろう、表題作。先に居た取材班も心霊目当てで来てるし。



     そりゃ初めての場所だし、迷って疲れて居るし、暗いし、怖いし、酔わされるし、一服盛られるし、思い違い、錯誤するよね。気づかないよね。疲れて無くても、怖いだけで気づかないと思う、私。



     迷い込んだ大学生を気に入って、引き止めたのは実行犯だから、しょうがないか。京都の「お茶漬けでもどうどす?」みたいな(これって慇懃無礼?)、知らないと恥をかいちゃう、本音と建前の見分け方って厄介だよね。ほんともぉ~その気もないのに、誘うのって止めましょうよ!


     その点、この作品に登場する霊能者の女性、はっきりしてて気をつかわなくてイイから、好感持てました。何も知らない大学生を、殺人のアリバイに使っちゃったのはいけないけどね。


     推理小説家有栖川有栖が推理したように、ドアを隔てて東西に分かれる地下道が回転したとかの大がかりなトリックじゃないとこも、好感持てました。


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    2.雪と金婚式

     冒頭、てっきり金婚式を幸福そうに過ごしている老夫婦が殺し合いを始めるのかと思っちゃいました。


     離れの住人が殺害されてからは、夫が殺したのかと思っちゃいました。それで嫌な記憶を忘れてるのかと。



     自宅の離れを殺害現場に使われた家主が、知らずに犯人のアリバイを作っていた。雪の密室って偶然だよね。

     柄刀一『密室の神話』四重密室も、あの夜ちょうどイイ具合に雪降らなきゃ三重密室のまま終わっていたの?


     スノーマシンのレンタル料ってそれほどでもないんですね。

     セキュリテイ万全(この老夫婦の邸はゆるゆる)の大邸宅の、離れに住まわせて貰えるって、私の理想の終の住処です。


    3.天空の眼


     グーグルアースって便利ですよね。自分の家が写っているのを観ると、複雑な気分になりますけど。そこに、写ってちゃいけないものが写ってたら……


     火村准教授曰く、写ってちゃいけないものが写ってることより、写らなきゃいけないものが写ってないことの方が問題。そ、そう?
     他の人は写っているのに、自分だけ写って居ない集合写真とか。身体の一部だけ背景に溶けて観えないとか。建てたばかりの家が煤けて観えるとか。――うん、それも怖いよね。


     一人旅先で撮った写真が、心霊写真なんて言われちゃったら……親切そうに、霊感のある奴にお祓いして貰うからって言われちゃったら、渡しちゃうよね。この女子大生、本人は、――そう言えば最近ツイてないんですよ……て心配してたけど、有栖川有栖も思ったように、失恋も三ヶ月で二度経験出来るなら、心配することないよね。方向音痴の癖に、一人で何処でも行っちゃう度胸があれば大丈夫。


     生命にかかわる危険な場所を密かにピンポイントで知っていて、後は標的者をそこに誘導するだけの犯罪。それに女子大生が偶然撮った写真を利用した犯人頭イイね。犯人のアリバイ作りに協力しちゃった被害者。何故、脅してる相手をそんなに信用しちゃうんでしょう。禁断症状始まった? 借金返してたからお金目当てか?


     火村の力を借りず、有栖川有栖が単独で解決した事件。彼もやれば出来る子。女子大生を気遣って、晴れやかな気分にはなれないなんて、優しいよね。充分、自慢してイイと思うんだけどな。隣人の教師との仲は発展したんでしょうか?


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    4.ロジカル・デスゲーム


     「ジュースが注がれた赤、青、緑の三つのグラスの中に、一個だけトリカブトの毒(一人分の致死量)が入っています。まず最初にあなたがお好きなグラスを一個選んで下さい。あなたが選ばなかった方のグラスの中から、自分は一つを飲みます。それから、あなたは選んだグラスを、自分は残ったグラスを手に取って同時に飲み干しましょう。外れを引いた方が、テーブルの上の百万円を受け取り、後始末をして出て行くことにしましょう」


     騙して室内に連れ込んだ犯人に銃を向けられた、火村はどうやってこのゲームを勝ち抜いたのか?



    p262
     残されたのは、赤と青。
     火村はまた椅子の背にもたれ、腕を組んだ。
    「このユニークなゲームに名前はあるのか?」
    「いいえ、考えていませんでした。うーん、名前ね。ロジカル・デスゲームなんてどうですか?」
    「子供っぽいネーミングだな。だいたいこの運と駆け引きだけを頼りにしたゲームのどこが論理的だっていうんだ」
    「論理的というよりは心理的と呼ぶのが適切ですか。サイコロジカル・デスゲーム。……しっくりこないな。僕には名づけのセンスがなさそうです」
     千舟は、空になった緑色のグラスをテーブルの端にやる。
    「青に変えますか?」
     火村は答えない。
    「せっかくの権利なんだから行使した方が後悔せずにすむと思いますよ。ああ、でも先生のお考えによると、僕が『青に変えますか?』と言うのは、そっちが当たりだからということでしたね。じゃあ、最初の直感を信じて赤のままでいきますか。僕はどちらでもいい」
     うるさいから静かにしていろ、と言っても黙らないだろう。千舟は法悦境にいる。自分が発案したゲームに酔っていた。


     今まで犯人がゲームを持ち掛けてきた相手みたいに自殺志願者では無い火村は、言葉遣いが「私」から「俺」に変わるほど生命の危機感じていたが、それでも自分だけじゃなく、犯人も助かることを願って考えたとこ、頭がイイだけじゃなく心も強い男性だよねぇ~


     毒がトリカブトで、効き目が表れるまで二十分位かかるってとこがポイントでした。青酸カリとかだったら、例え一人分の致死量しか入って無くても、こうはいかないよね~苦しむ前に救急車呼びたいし。千舟の隙を伺う火村にとって、地獄の門を垣間見たような時間だったろうね。千舟が銃を向けていたとは言え、三分の二飲んだ千舟の症状が現れるまで、よく辛抱して待てたものだ。

     

    p272
    「やっぱり人間が一番よく躓くのは確率が絡んだ問題、ということだな。言い直す。――最初は三択問題だった。俺が引いた赤いグラスが当たりである確率は三分の一。青もしくは緑が当たりである確率は三分の二ということになる。ところが、千舟が緑のグラスを飲み干したことによって、緑が決闘の場から消え、三分の二という確率を青が一つで引き受けることになる。だから青は、赤より危険だ。それが当たる確率は二分の一じゃない。千舟の干渉で、確率は変化したのさ」
     言い回しを若干変えて、再び抗議せずにいられなかった。
    「どうも新手の詐欺に掛かってるみたいや。お前、わざと理解できんようにしゃべってるやろ」
     心外そうにされた。こちらの自信がちょっと揺らぐ。
    「じゃあ、こう考えてみてくれ。千舟が用意したグラスが三つではなく、十……いや、いっそ百個だったと仮定してもらおうか。そのうちの一つが毒杯だ。どれかを選んで飲むよう命じられた場合、あまり恐ろしくはないだろう。当たりを引く確率は百分の一なんだから」
    「そうやな」
    「お前は運だけを頼りに一つのグラスを選ぶ。その後、千舟がこんな行動をとったとしよう。九十八個のグラスを空にして、テーブル上に二杯のジュースを残すんだ。最初にお前が選んだものと、他にもう一つだけ。そこで『選び直してもかまいませんよ』なんて親切めかした誘いを受けたとして――変えるか?」
    「……いや」
     まさか、それはない。最初に選んだグラスは九十九パーセントの確率で外れ。まずセーフだ。一方、わざわざ残されたもう一つのグラスは限りなく高い確率で当たりなのだから。




    ――マ、マズイです! 私。小学生にも理解出来る(らしい)この理屈が解かりません……心理的なら解かるんですが。


    ――ヤ、ヤバイです! あとがき読んだら……
    やっぱり私、テレビで、そのIQの高いコラムニストの女性の解説、観たことあるんです。やっぱり、その時も、そうか? って理解出来なかったんです。解説されても理解出来ないってことは……解かる人にとっては、「何故理解出来ないのか解からない!」ってことなんでしょうね。


     身長2メートルと1メートルの人間じゃ、同じ景色観てても同じようには観えないってことと似たような感じなのかしら? 
     認証バイアスと言うらしい、同じ事象でも、ポジティブ脳とネガティブ脳では、捉え方が違うように。
    ――ん? この喩えも違う?


     最後に「……生きたい」と言った千舟。強制的に命を賭けられた火村にしてみれば、してやったり!



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    テーマ : 読書感想文
    ジャンル : 小説・文学

    tag : 長い廊下がある家 有栖川有栖 ロジカル・デスゲーム 錯誤 心霊 地下 スノーマシン

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    唯

    Author:唯
     読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
    と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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