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『暗闇・キッス・それだけで』森博嗣:読書感想

2015/1/26集英社単行本 1.944円
画像もamazon様からお借りしてます。
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  内容紹介
 大学在籍中にコンピュータのインタプリタを作製、休学してソフトウェア会社を創 業、1980年代にコンピュータ業界で不動の地位を築いた、IT史上の伝説的存在ウィ リアム・ベック。会長職を譲り、第一線から退いたウィリアムは現在、財団による 慈善事業に専念している。探偵兼ライターの頸城悦夫は、葉山書房の編集者兼女優 の水谷優衣から、ウィリアムの自伝を書く仕事を依頼され、日本の避暑地にある彼 の豪華な別荘に一週間、滞在することになった。そこにはウィリアムだけでなく、 その家族や知人、従業員などが滞在していた。
 ところが、頸城別荘に着いた後、思いもかけない事件が発生する。警察による 捜査が始まるが、なかなか手がかりをつかむことができない。そんな中、さらなる 悲劇が……。取材のために訪れた頸城は、ウィリアムの自伝執筆の傍ら、この不可 思議な殺人事件にも関わることになる。果たして、事件は解決できるのか。
 忘れ得ぬ苦しい記憶を背負った探偵が、事件の謎・愛の影を探求・逍遥する、至高の長編小説。待望の書き下ろし長編ミステリー。




 ↓ 以下、ネタバレあり。




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     森博嗣にしては親切な作品で、解かり易いと思いました。何時も通り、私はトリックをメインに読んでないし、今回は犯人捜しもさほど気にならなかった。探偵兼作家の恋愛成就、心の行方の方が気になりました。富豪の別荘で一週間を過ごす。執事、メイド、コック、庭師、操縦士つきの生活がただただ、イイなぁ~と優雅な世界に浸りたかった。


    p237
    「わたしたちというのは?」
    「私の家族、つまりベック家の問題です。もうずっと昔のことなのに……。既に解決したと思っていたのに、人間は歳を重ねると変わるもの。お金がいけないのよ。ウィリアムは、お金を集めすぎた。もし、わたしたちがもっと貧乏で、安アパートで暮らしていたら、きっとこんなことにはならなかったわ」
    「歳を重ねた、というのは、ドクタ・ハイソンのことですか?」
    「ええ、そうです。あの人は、とても良い人だった。ずっと良い人だった。だけど、歳を取って、自分の躰も不自由になって、仕事も覚束なくなってくる。奥様は、ずいぶんまえから入院していて、歩けなかったし、しゃべることもできなくなったわ。三年前に亡くなりましたけれど……。でも、お金がかかったんです。生きているときには」
    「そうなんですか……」
    「でも、そういう苦しみに長く浸かると、余裕がなくなるわ。良心とか友情といったものは、余裕のある心が交わす約束なんです。自分が苦しくなれば、それどころじゃない。そうやって、人は地獄へ落ちていくの」



     犯行の動機になった20年前の事故(事件?)も、当時は友人親子を庇って、隠ぺい工作してくれたのでしょう。それが歳をとって余裕がなくなると、幼い息子の過ちをネタに、大富豪夫婦にやんわりとお礼を求めるようになったのでしょう。
     なのに被害者の遺児シャーロットには、生涯保障されるような賠償金払ってあげなかったのでしょうか? ほんとにアンディとシャーロットの出会いは偶然なのでしょうか。
     
     

     アンディの地位と立場なら、五歳の頃の過ちを暴露されても痛くも痒くもないような気がするけど。幼子二人にカウンセラーつけなかったんだろうか?


    p229
    「じゃあ、何が怖いわけ?」
    「それは、えっと、つまり、人を殺すような、人を平気で殺せるような、そんな人間がいるということが、怖いんです。どうして、そんな怖いことができるのかって」
    「そうか……。でも、そのとんでもない行為も、具体的には、拳銃を構えて、引き金を指でひくだけなんだ。誰でもできる。子供でもできる。簡単なことだよ」
    「私はできません」真里亞が首をふった。「簡単じゃないと思う」
    「そう思うのは、君の頭脳が、そう計算しているからだ。殺人は犯罪である、人の命は大切なものである、誰にも生きる権利がある、人は自分の行為に責任を持たなくっちゃいけない。そういう知識を教えられて、その価値観が君の頭の中にあるからだ」
    「誰だって、そう思うんじゃないですか?」
    「そうでもない。そんな知識がインプットされていない人もいるし、もし知識を持っていても、けっこう簡単に否定できるかもしれない。たとえば、もっと重要なことがあるって、新しい知識が入ってくれば、あっさりと価値観は入れ替えられる。もっと重要で、絶対的な正義があったら、知識なんて、すぐに消えてしまう」
    「絶対的な正義って、何ですか?」
    「僕は、そんなものはないと思っているけれど、世界には、そういうのが沢山、いろいろあるんだってこと」
    「テロみたいなもののことですか?」
    「そう。自分の命だって簡単に投げ出せるくらい大事な正義があるんだ。そんなものを知ったら、人の命なんて、立ち入り禁止の標識くらいの意味しかない。駄目ですよと言って止められるものじゃない」
    「だけど……」真里亞は、そこで首を傾げたが、唇が震え、目を潤ませた。「それでも、人を殺しちゃいけないわ」



     頸城は最後まで踏み込ませなかったけれど、すごく積極的にアプローチしてきた真里亞も良い娘ですよね。都鹿といい、頸城、若いお嬢様方にモッテモッテですよね。優衣にイイ様に扱われてた、アラフォー男の何処がそんなにイイんだか。


    p110
    「奥様の方面はいかがですか?」
    「サリィは、素晴らしいパートナーだ。私は、彼女を愛している。三十年も一緒に暮らしているんだ。こんなに長続きするオペレーションシステムはない」
    「細かいバージョンアップがあったのですね?」
    「それは、そのとおり、お互いにそうだね。いつも、修正して、パッチを当てる。そういうものだろう? でも、最も大事なことは、最初の基本設計だ。なんだって、そうだ。人間もそう。修正できるということが、重要な性能なんだ。わかるかい?」
    「うーん、頑固者では駄目だ、ということですか?」
    「そう、それもある。すべての情報を素直に受け入れる。自分の間違いにできるだけ早く気づくセンサを持っていること。人から指摘される前に気づいた方が良いからね」
    「どうしてですか?」
    「自分で気づけば、バージョンアップできる。人が指摘すれば、それはエラーになる」
    「僕は駄目ですね。指摘されてばかりです」
    「エラーは修正すれば良い」
     ベックは、両手を広げ、バレーボールのトスのような仕草をした。



     そうです。修正すればイイんです。修正出来る人間なら……ここだけ聞くと、夫婦仲良好に受け取れましたが、奥様とは、もう何年も寝室が別で、同居人と言う感じだと話してます。これは多分、スージィとの一件からじゃないでしょうか。ビジネスパートナーでもある二人は、お互いのオフイスも入らないそうです。これに対して頸城が、プライベートは分けてるんですね、と返していました。オフィスのデスクって、プライベート?


    p283
    「あるいは、この家に恨みを持っている者がいるとか……。そんな話は聞いていませんか?」
    「聞いていません。嫌がらせで、できることじゃない。もっと切実なものでしょうね」
    「切実?」高橋は言葉を繰り返して、呆れた、という顔を一瞬見せた。
     僕が言いたかったことが伝わらなかったようだ。僕は、人殺しというのは、すべて切実なものだと考えている。戦争だってそうだ。テロだって例外ではない。どうしても避けられないものだから、この最後の道を選ぶしかない。これ以外に生きて通れる道がない、という意味だ。




     今回の犯人は、まさに切実だったのでしょう。これまでの森作品には、もっと気軽に人殺しする人間がたくさん居たような気がします。それが一番手っ取り早かったとかの理由で。私は、嫌がらせでも、できると思うのですが。


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    p328
     僕が知っていることを文字にした。その作業の中で浮かび上がってくるのは、幸福とか不幸とか、そういったものが、実に些細なことで結果的に大きく食い違って出現してしまう、ということだった。

            中略

     翻って、自分は幸せだろうか、と僕は考えた。
     よくわからない。けれど、特に苦痛を感じているわけでもない。かつては、自分の人生はもう終わりだ、こんな不幸な人間はいない、と思っていたくせに、気がついてみたら、今はけっこう自由気ままに生きている。不便もないし、そこそこの贅沢を満喫している。




     また、最後の最後で騙されました。頸城が求めていたのは、かつての同棲相手、優衣じゃなかった。もっと前から、砂の唇の持ち主が棲みついて居たんですね。




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    tag : 暗闇・キッス・それだけで 森博嗣 頸城 コンピュータ IT 別荘 自伝 射殺 女優

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    Author:唯
     読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
    と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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