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小説感想:笠井潔『薔薇の女』

 「君のは玄人受けはするけれど、一般大衆向きじゃないよ。もっと読み易く解かり易く、読者が食いつきそうなネタにしなくっちゃ、三作目も今までの調子じゃ売れないよ。被害者は若い美女これだね! あとがきも必要だよ」とか、編集さんに言われたんじゃないの? と想像してしまった。 シリーズゼロ作『熾天使の夏』は番外編にしても、第一作『バイバイ・エンジェル』、第二作『サマー・アポカリプス』に比べて、いやぁ~読み易い。これから矢吹駆シリーズを読もうとしている方には、この作品がお奨めですね。題材もよく使われているもので、映像が浮かびやすい。実際この原作の映像観たことあるかも。犯行も、不在証明の偽装も解かり易い。犯人は明らかに、不自然な行動しますもの。ミステリー重視で犯人を知りたくなければ、やはり順番通りに読むべきです。後作で、前作のネタバレしますもん。私はいい加減な記憶が役に立って、犯人の名前直ぐ忘れますもん。それに犯人は一人じゃ済みませんし……

あらすじ 『アンドロギュヌス両性具有)殺人事件』




     火曜日の深更、独り暮らしの娘を絞殺し屍体の一部を持ち去る。現場には赤い薔薇と血の署名――映画女優を夢みるシルヴィーを皮切りに、連続切断魔の蛮行がパリ市街を席捲する。酷似した犯行状況にひきかえ、被害者間に接点を見出しかねて行き詰まる捜査当局。事件のキーワードを提示する矢吹駆の現象学的推理が冴える、シリーズ第三弾。




    ↓ 以下ネタバレあり。


    20110623072424.jpg 

    「ホテル<ブルターニュ>の事件で、その全体の支点にあたる究極の謎はただ一点、何故、不在証明の必要のないベアトリス・べランジュが不在証明を偽装しなければならなかったのか、という問題に帰着するのです」


     アンドロギュヌスの動機は解かり難いものの、ホテル<ブルターニュ>のトリックは犯行も動機も解かり易く、犯人が駆に告白文を渡しておいてくれたから理解出来た。この時代ファックスあったのかな~と思っちゃったけど、トリックはもっと単純明快。他人の思い込みを当てにしてたんですな。いやぁ~それにしても、あの妹も、いっくら多額の遺産譲り受けるからってよく、猟奇殺人五件も犯したような少年引き取るよ。成人した後も一緒に暮らしていたなと思う。何時バレても逃走しやすいように財産を移す準備していたなら、恐喝者が現れた時さっさと逃げちゃえば良かったのに。


    「――それにより、殺人事件の被害者がその加害者のために不在証明の偽装工作をしたという、何とも不可解な、歪み捩れた謎が残されてしまったのです。殺されるために、殺す人間の不在証明を偽装工作してやった被害者……」




     本物の半陰陽の人間が登場するのかと思ったら、アンドロギュヌスの心理はもっと複雑だった。元女優ママンの育て方に問題があった。最後までどっちがアンドロギュヌスなのか決め手がつかめず、駆のように直ぐ断定出来なかった。


    「とにかくアンドロギュヌス、唯一逃走路を発見したのです。どちらかが先かと言うのは、社会生活に支障をきたさない以上、異常は異常ではない。すなわち自分は健全であり病的でない……」
    「正気と狂気、正常と異常の危うい境界に位置して不安定に揺れていた」
    「女性を殺害することで歪んだ性衝動を解放したとしても、絶対に自分の犯行だと判らないようにすれば、つまり自分の社会生活が保全されるならば自分はまだ<病的>ではない……」




     十五年前の殺人を、家族が隠ぺいしちゃったから、そう言う思考になるよね。過去も現在の殺人も、ママンがイケなかった。収容所に連行されたパパンが早死にしたのも、ママンが情勢読めず、ユダヤ人の恋人の危機感を理解してあげなかったから。


    「何故、第三世界の飢餓や貧困が過剰な富の浪費の形だということになるのですか」
    「マドモワゼル、農業生産物だけを例にとっても、全世界的な視野で見れば、欠乏など何処にもないのですぞ。適正な分配が実現されれば、南の世界の上はこの瞬間にでもたちどころに解消するはずだ。それができないのは、人類のエゴイズムや愚かしさの結果結果と言うよりも、普遍経済学の原則によるものだと考えるべきだ。



    ↑これ本当なのかな。今でも? へ~そうなんだと思った。


     

    この間に合わせ的な浪費システムには、いつか決定的な破綻が生じざるをえない。東西の全面核戦争によってか、このシステムによって不当な犠牲を強いられている第三世界の民衆がとうとう耐え切れなくなって……(中略)
    ――こうして人類は、過去は一万年間に蓄えた過剰エネルギーを一挙に放出し、成長の原則のみを肥大化していく宿命のこの病んだ生物は核の炎のなかで自滅し、地球上から完全に消滅することになる」




     ここでもイリイチ、殺人の唆しをしております。犯人の目的は、『バイバイ・エンジェル』のマチルド同様、解放運動だった。でも、途中でイリイチに騙されてると気づきながら、復讐以外に生きる目的を持てなかった犯人は従い続けなければならなかった心理が、詐欺の被害者にも似てるような気がした。
     その犯人を射殺してしまった若い警官に、何故あんなに駆が激怒したのか理解出来なかった。警官としては失態だけど、目の前で先輩警官が撃たれたら、反射的に撃っちゃうよね? すでに手紙を受け取っていたからイリイチのことは解かっただろうし、あの駆が、一人になって自分のしたことを考える時間を与えて欲しいと願う、犯人に同情したとは思えないのだけど……その犯人に、駆が命を救いたいと慌てるほど、会いたかった人を殺されたのにね。


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    tag : 笠井潔 薔薇の女 両性具有 猟奇殺人 アンドロギュヌス エルマフロディット 双子 女優 饗宴 プラトン

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    唯

    Author:唯
     読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
    と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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