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小説感想:笠井潔『バイバイ・エンジェル』

imageCAHBKRIJ.jpg 矢吹駆シリーズ第一作目。『ラルース家殺人事件』この作品、イリイチ登場して居ない。ナディアと駆の出会いは、大学の講堂で一目ぼれしたナディアが、駆の後をつけ「私の日本語の先生になってくれない?」って、ナンパした感じ。事件発生後、もう合わないと言っていた美女マチルドに、笑顔を見せている駆の姿に、ショックを受けたナディアは、初めてじゃないんだし……と、その時付き合っていたアントワーヌの誘いに応じてしまう。

↓以下ネタバレあり





51dtU6JIaBL__SL500_AA300_.jpg アパートの五階の部屋の住人、オデットと思われる中年女性の遺体が広間で発見される。彼女は外出用の服と靴を身に着けていたが、鍵が入ったハンドバックは寝室に置かれたままだった。彼女の指先には歯磨き粉が付着しており、洗面所には歯磨き粉がばら撒かれ瓶が転がっていた。洗面台もバスタブもシャワーも濡れていた。化粧台は綺麗で屑籠は空。鍵が開けられた隠し金庫の中も空。

 彼女の生活習慣。毎朝8時に起きて、生果汁を飲むと入浴着替え化粧をし、十時には美容院に電話を入れ、十時半には美容院に現れると言うもの。事件当日も、美容院の女主人は、十時に彼女から電話を受け、そのさい訪問チャイムが鳴る音を聞いたと言う。九時前に、アパート周辺で不審な男を目撃したとも言う。招かれた誕生日の日、ナディアも同じような風貌の男が、本を置いてくのを見かけていた。

 オデットは妹ジョゼットと二人暮らしだったが、前夜、壮絶な姉妹喧嘩をし、「殺されればいい!」の捨て台詞を残してジョゼットは家を出て行ったそうだ。興奮を治めようと、オデットは何時も服用している睡眠薬以外に強めの薬を飲んでいた。これが犯人を慌てさせ計画に狂いが生じた原因。より凄惨な殺人現場に仕立て上げてしまった。姉が殺されてからも、姿を現さないジョゼットに容疑がかかり、そのジョゼットらしい女性と会って居た、愛人アンドレがホテルの客室で爆死する。

 被害者オデットと思われる女性の遺体には、首が無かった。犯人は首を切ることによって、何を隠そうとしたのか? 探偵小説愛好家のナディアは、意気揚々と、「殺されたのはジョゼットで、殺したのはオデットだ」と入れ替えの推理を披露する。駆は、そう言ういかにも、ってのに引っ掛かりやすいところが探偵小説愛好家風の臆断、固定観念なんだよね~君もお父さん達を見習って、もっと現実的に物事を観た方がイイよ、みたいなことを意味沈殿と言う言葉を使って、ナディアの推理を否定する。
父も友人も居る前で、自分の推理を否定され、馬鹿にされたと感じたナディアは、駆に憎しみさえ抱いてしまう。

 オデットは歯磨き粉の瓶の中に金庫の鍵を隠していた。オデットの指先に歯磨き粉が付いて居たのは、犯人に脅されて歯磨き粉の瓶から鍵を取り出した為だろうとみられていた。鍵を替えて怯えていたオデットが、部屋に入れる人物は限られていることから、破産予定されている愛人のデュロワとジョゼットが共犯ではないかと、警察は二人の行方を追うが――。行方不明の首と女と男の死体が発見される。

        駆が問題にしたのは六つ。
1.被害者の指先についていた歯磨き粉。
2.衣服には歯磨き粉がついていない。
3.綺麗な化粧台と屑箱。
4.化粧台の、座った角度に調整された鏡。
5.濡れていたバスタブとシャワー。
6.外出直前の死体。


   駆の推理
1.オデットは歯磨きをしていた。
2.オデットはまだ寝間着だった。
3.歯磨きをしていたんだから、当然化粧前。
4.オデットのようなお洒落を気にする女性が、自分で着替えていたのなら、鏡を立った角度にして、全身チェックしたはず。
5.風呂はオデットが使っていた為、犯人はシャワーを使った。
6.女性は出かける直前まで、室内スリッパを履いているのではないか。外出の支度を済ませて居たのに関わらず、外套はソファの上、鍵の入ったハンドバッグを寝室に置いていたのは何故か? 犯人は普段外出するさい、ハンドバックを使用しない人物ではないか、と駆は考えた。
 そこから駆は、十時以降のアリバイを持つ為、九時に現れた犯人は首を斬らねばならなかった理由を導く → 犯人は化粧が出来ない。


 そこで私の感想。オデットは化粧してから着替える女性だったのかな。なら犯人は、着替えさせるのは覚悟して九時に行ったのか。オデットが寝坊せず普段通りだったとしても、化粧終わってなかったんじゃないの? どうも時間設定に違和感。一時間も無い時間内で、被害者を殺し服と靴を身に着けてから首を切り、自分は返り血をシャワーで洗い流し、金庫の金を盗み、電話をかけるなんてこと出来るんかい? と思った。首切りは計画外だし、電話で指示されたものだし無理じゃね? 
 現代のCSIなら排水溝も調べるから犯人特定出来るだろうな~電話の発信受信記録って、電話局に何時から残るようになったのかな~そこからもアリバイ工作解かるよね。これ、1975年のお話だから。錯覚を利用された、アンドレがひき肉みたいにされた。そこまで強い爆弾使っていたら、隣も上下も被害にあってたんじゃないの?


 ナディアの回想で語られていたアントワーヌと、この作品で登場するアントワーヌの印象が違い過ぎる。彼はあくまでも手下で、冷酷にナディアを利用したようには見えなかった。彼は第一の事件から眠れなくなっていた。ナディアをアリバイ作りに利用したが、弄んでやろうとしてナディアを誘った訳でもなく、彼もいっぱいいっぱいだった。だから駆に真相を言い当てられた時、直ぐに告白してしまう。ほんとうに最後にナディアの顔を見たかったんじゃないだろうか。殺されても当然のような叔母を殺した時も、実際行ってみるとそうは思えず、まして急遽首切りまで命じられた彼の心境を想うと、目的の為なら手段を選ばない冷酷な革命家には見えなかった。実際、自分の手で叔母の首を切り、裸の身体に返り血を浴びたアントワーヌの方が、駆よりも地獄を見たって感じがするんだけど。


 『奥様は魔女』の女優さんが、全裸で両親を斧で殺し(シャワーなんてものが無かった時代だから、風呂場でバケツの水を頭からかぶって返り血を洗い流すシーンが印象的)、証拠不十分から無罪になった映画を思い出しました。ラストに、お茶の席で姉が聞くんですよね。「あなた本当に両親殺して無いの?」って、ニヤリと笑うヒロイン。



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tag : 白いページ 感想 笠井潔 バイバイエンジェル 小説 首なし パリ

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 読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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