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小説感想:笠井潔『熾天使の夏』

61XtwyI8A1L__SL500_AA300_.jpg あらすじ

学生運動に伴うリンチ事件の主謀者としての刑務所生活を終え、ひっそりと男は暮らしていた。ある日彼は誰かに尾行されていることに気づく。待ち伏せてみるとそれは昔の仲間であったのだが…。逃亡先の植民地都市で、かつて革命の時を生きた男は何を思い、何を求めるのか。矢吹駆の罪と罰を描いた、シリーズゼロ作としても知られる、笠井潔の原点!幻の処女長編テロリズム小説。

↓以下ネタバレあり。



 私にとって、矢吹駆シリーズ四作目にして、初めて本が薄い! 小さい! 200Pなんて他の作品に比べると夢のよう! などと妙なところで感激した本。手に持つのにちょうどイイ軽さは詩集みたい。冒頭から句点の無い文章もしつこいくらい修飾されていて、詩作みたいで、黙読すると意識が途絶えそうになるので、音読してみた。
 完璧な自殺を目指して、その日まで賭博場のルーレットで、赤に賭け続ける駆の回想。

 ナディアに出会う前の、生きていた時代の駆って感じ。シリーズの他の作品とキャラギャップあり過ぎ。普段は植物のように無害そうな駆が、いざと言う時どんなことも平気でやれちゃうちゃっかりとした生命力は、この時代に培われたようだ。

 

革命家とは自身の趣味や正義感で革命家になった者ではない。人生の法廷であらかじめ死刑の判決を下された者、逃げ場のない袋小路の壁際で運命のように革命と出食わした者、革命を選んだのではなく革命の無慈悲な掌で容赦なく摑まれた者、ようするに革命と言う監獄に終身刑で幽閉されている囚人が革命家なのだ。革命家が革命を選ぶのではなく、革命が革命家を選ぶ。革命家とは革命によって選ばれ摑まれてしまった自身の宿命を自覚した人間に過ぎない。


 駆が学生運動にはいった理由、すっごいさらっと描かれていて(2、3行位なんで何処に書かれていたか見つけ出せなかった)、よく解からなかった。子供の時から世界に色を感じなく、一感じることが出来たからだったけ? それにしても……もう革命家だから父親には成れない、とニヒルに言い放つなら、避妊しろ!?

「わたしは殺したくない。それは規範でも倫理でもない。生きること自体から切り離された観念に拘束されているからでも、殺されたくないから殺さないという損得計算でもない。殺したくないと、生きていること自体がわたしに感じさせるの……」
「風視、君はこの世界に棲んで、殺さないで生きられると思うのか」
「わたしは殺したくないの。殺したくないと感じる事実の方が殺さなければならないという認識よりも重たいと思う。
わたしは殺人者であることに耐えられないから、第三世界の民衆を毎分一人ずつ殺し続けていると憑二がいう、日本最大の侵略企業に爆弾を投げつける。爆弾を投げつけることは、殺人の共犯者であるしかないわたしの自己告発かもしれない」


 私には、子供を産んでからも、より過激な革命家になった風視の心境が、解からなかった。母親に成る前よりも命の重みを感じ、自分の腕の中の子供の安全よりも勤め先の園児の温もりよりも、第三世界の子供達の命を救う為にテロリストになるって言うのが。俯瞰的に見ると志は立派なんだろうけど、本末転倒のような……もちろん、爆弾で殺してしまうなんて思っていなかったからだろう。爆弾を扱う危険は承知していた筈。
 憑二はまったく理解不能。葦男の鬱屈した気持ちなら解かるような気がした。

 駆の元カノ風視は子供の寝顔を見ながら服毒自殺をする(最後までキレイでいられた)。憑二は警察に捕まった。その弟分、葦男は機動隊を巻き込んで自爆する。憑二の言っていた幻の中央委員会を目指して、海外に逃亡する駆。 

51XAQ08HDKL__SL500_AA300_.jpg

「昔の人が熾天使を、羽でランプのガラスを夢中で叩いている蛾に喩えたの。ランプは神の聖なる光の比喩ね。狂った蛾はランプの火に喜んで身を焼かれるだろう……」
「熾天使は神にもっとも近い存在です。
セラピムとは、燃えるものという意味ですね。神への愛と熱意のため、全身が燃えている精霊です」


 熾天使に成れたのは誰だったのか。
生死を賭けた赤に敗れ、生きてるきらめきを感じた駆は成れたようだ。
↑上記、駆の言葉によると、熾天使だったのは誰だったのか。

 
 ラストは駆も中央委員会か警察に捕まるようだが、そこからどうやってチベットの僧侶の下で修業出来るようになれたのか? 新作の『青銅の悲劇』では、ナディアがアニメ好きになり日本に留学と言う設定らしい。当然、駆も帰国することになるのだろうか。とすれば駆って幾つ? 永遠のR25? 駆の犯罪は揉み消されているのだろうか? 死刑判決下されて当然の重罪を犯しているのに。この過去が、駆がナディアに語る、自分自身の悪魔を見たと言う経験なのだろうか。なんか違うような気がする。未読のシリーズ読めば解かるはず…… 

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 読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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