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小説感想:笠井潔『吸血鬼と精神分析』

 難解な小説 笠井潔吸血鬼と精神分析

                   (あらすじ)
 

 パリ市東部に位置するヴァンセンヌの森で女性の焼屍体が発見された。奇妙なことに、その躰からはすべての血が抜かれていた。続いて、第二、第三の殺人が起こり、世間では「吸血鬼」事件として注目される。一方、体調不良に悩まされていた女子大生ナディアは友人の勧めで精神医のもとを訪れる。そこでタチアナという女性に遭遇し、奇妙な依頼を受ける。各々の出来事が、一つの線としてつながったときに見えてくる真実とは…。ナディアの友人である日本人青年が連続殺人の謎に挑む。本格探偵小説「矢吹駆」シリーズ第6作。

 
↓以下ネタバレあり。





51drzcMb8YL__BO2,204,203,200_PIsitb-sticker-arrow-click,TopRight,35,-76_AA300_SH20_OU09_   5件の殺人事件が起こる。
 第一の事件と第二の事件(一人目、二人目、三人目)と第三の事件(5番目)の犯人が違うなんて。
 それも第二の事件と第三の事件では、殺害者と死体遺棄者まで違うと言う。
しかも、第一の事件の殺害者は、第二の事件の死体遺棄者をそそのかせる為に、わざと被害者のダイイングメッセージにも受け取れそうな、竜または悪魔と読める「DRCG」の血文字を残しておいたと言う。
 この難問全問正解出来た読者様って居るんですかね?

 仕掛けはもう二つある。ルーマニアから亡命してきた美女は、二重人格に見せかけて妹の存在を隠そうとしていた。その詐病を見抜いていた精神科医こそ多重人格者で、なんと! 二番目の人格は太母神の忠実な僕のヴァンピールで、三番目の人格は太母神であるアスタルテそのものであると言う。


 さぁーここでもう一度聞きたいです。これも解かっていたと言える読者様って居るんですか? 


 解かるかっー! と最後まで読んで、私のように本を投げつけたい衝動に駆られた方は居ませんか? 


 題名通り『吸血鬼と精神分析』に詳しい方なら、解かって当然の内容だったんですか?


 精神分析と神学論議現象学の理論が長々と語られるこの作品、何時かは面白くなるんだろうと期待して(我慢して)読み終えたら、これほど複雑怪奇なお話だったなんて。単行本で800Pと言う、普通の二冊分の量だったから、損した時間を返せと言うのが正直な感想。ええ、単に私の身の程知らずの選本ミスだっただけですよ。作者様を恨むなんて筋違いだってことは重々承知しています。
 

 探偵役駆は、犯人に銃口を向けられても、学生に講義をするかのように、推理を長々と語るのが違和感あり、それに対する主人公の思考まで描写されてるんだよ。駆が時間をとった御蔭で、第一の事件の殺害者に発砲されて死者まで出しちゃったじゃないか。第二の事件の死体遺棄者には自殺されるし、殺害者には自殺図られるし、どんだけおっとりした探偵さんだよ。第一の事件の殺害者を宿敵と見做し「殺す」って追っていたのに、猫が鼠を甚振るように、あっさりと逃げられるし、トホホな結末。

 作中でドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』が引用されるが、あれも各登場人物達が、ワアワアと宗教論議を叫んでいる感じで、うるさかったな。
淡泊過ぎるくらいの森博嗣のGシリーズ読もうっと。


 一晩経って解かんないままじゃ悔しいから、事件の整理整頓。

 
 五件の殺人事件が起こるが、犯人によって三つに分けられる。


 第一の事件、フランスに亡命していた元ルーマニアの高級将校が自宅で、暗殺される。殺害者イリイチ 協力者ストりゴイ

 第二の事件、一人目二人目三人目と連続。脱血死体。ヴァンピール(吸血鬼)を連想させる。殺害者ジュリア 死体遺棄者ルブリョフ

 第三の事件、5番目 ルーマニアからルドリョフと一緒に、亡命した体操選手タチアナが第二のヴァンピール事件四人目の犠牲者にされた、と思いきや便乗したもの。殺害者タチアナ 死体遺棄者シモン


 第一の事件の被害者チモフチェは、過去にルブリョフの父親を殺していた。全身の血を抜き取って致死量を本人に見せつける拷問で。
 それを知っていた暗殺者イリイチは、ルブリョフに見せつける為、ルーマニア語で竜を意味する『DRAC』血文字を書き記しておいた。
 それをルブリョフは神の啓示と受け取ったが、それで直ぐ人殺しを始めた訳ではない。
ジュリアが一人目を脱血死させた現場に、たまたま工作員の指示でルブリョフが現れる。慌てて身を隠したジュリアは、キーホルダー(日本製)を落としてしまったが気づかなかった。
 “血を失った肉”を見て、ムーミンを河馬だと思ったルブリョフは、ヨブ記を連想した。被害者のバッグに河馬の徴を入れて、被害者を焼いた。その時、右手を火傷しちゃったから、二人目からは被害者のお腹にヘブライ語で焔と左手で書いて代用した。その場に、ヨブ記をなぞる動物の徴が見当たらなかったので、鷹、白馬とその名を表す場所に死体を遺棄した。

 駆の予想では、四人目の犠牲者の徴は駝鳥になる筈だった。連続殺人の徴の意味を知らなかったタチアナとシモンは、動物つながりで白鳥の場所にセーヌ川を流れて来たように偽装するが、被害者の靴を道路に落としてしまったこともあり、これはヴァンピール事件に便乗したものだと気づかれる。
 
 タチアナの動機 双子の妹ストリゴイに憎まれていた。ルドリュフ共々、工作員として扱き使われていた。妹になり代わろうと計画していた。ヴァンピール事件の犯人がルドリュフと思い、愛する同居人を守るため、イリイチのお金を奪い取って、二人で海外逃亡しようとしていた。
 シモンは、美しいタチアナに恋した為イイように利用されただけ。前の事件で精神に不調をきたした幼馴染ナディアに、ジュリアの診察を受けさせ、タチアナとストリゴイに出会わせ、タチアナは二重人格なのでは? と思い込ませる。

 ジュリアの動機 心理分析の思想が、師であるシャブロルと異なって来て、以前は愛人だったこともあり憎しみに変わった。
 第二の人格ヴァンピールが、男に穢された娘達の血をアスタルテに捧げ浄化して貰う為、“肉から失われた血”を欲していた。シャブロルに罪を着せようとしていた。何故ルドリュフが死体遺棄してくれるのか解からなかった。その点が、犯人はシャブロルではなくジュリアだと解かった駆。シャブロルが犯人なら、二人目も三人目も脱血死体と一緒に、ヨブ記になぞらえた動物の徴を残していた筈。ルブリョフはパラノイアで、シャブロルの患者だった。ルブリョフの思考を熟知していたシャブロルが、彼を利用しようと思ったら一人目の被害者から、彼を呼び出していただろうから。


004ankoku_v2_a_20130419181532.jpg  ルブリョフがヨブ記に擬え事件を複雑にさせたアイテム、精神科医ジュリアのキーホルダー。「ムーミントロールを河馬と思うフランス人は居ない」アニメを観て、ムーミンを河馬だと思った日本人は多いと思う……。


 精神分析、現象学の理論、神学論議この区別すらつかなかった。あのややこしい話を(もーどーでもいいやん! と投げ出した)、長々説明するなら、殺人は、ヴァンピール事件だけに絞って欲しかった。そうしたら400Pで納まっただろうに。    


 このままでは悔しいから『オイディプス症候群』も読んでやる!




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 読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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