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乙一『ZOO』感想

 5本のオムニバス映画のタイトルにもなっていた、この作品の内容が解からなかった。それで小説を読んでみたいと思っていた。小説(文庫)映画共にラストをかざり、短編集でも表題作になっていたこの作品が解からなければ、他の四本の作品を含めて全体を覆うカラーがつかめなくて残念なような気がしたから。


以下↓ あらすじ ネタバレ





 一人のまぁ若い男の話だ。映画でも、風貌から普通のサラリーマンじゃないよね、ってことが判る。インスタントカメラを使っているのだから(ここがこの話のミソ)、プロじゃないことなど判りそうなものなのに、映画ではカメラマン? かと思った。小説では、勤めも止めて貯金も底をつき、もうじきホームレス確定と言う状態だった。

 

 毎朝、男の部屋の郵便受けに一枚の写真が入っている。そこに写っているのは、彼がよく知っていた女の死に顔、こんなことがもう百回以上も続いている。男は毎日一枚一枚スキャナでパソコンに撮り込み、アニメーションソフトを使って、腐敗していった女の顔を遡って観る。男は、気持ち悪い耐えられないと思う。 
 

 男が車のドアを開けると、そこでは紙クズのように丸められた写真が落ちている。それは生きている女を写した最後の写真。
男は、美しかった恋人の写真を見つめて誓う。
「この日付は彼女が行方不明になった日じゃないか! 誰がこんなことを? そいつが彼女を殺したに決まってる! 俺が見つけてやる!」そして、男は何時ものコースに車を走らせ、今でも助手席に座っている彼女との記憶をよみがえらせる。


 彼がカメラに凝るようになったのは、気まぐれな女にそそのかされるまま(男は彼女のそう言うところが好きだった)に、裏さびれた動物園に入ったとき檻をバックに女を写したことが始まりだった。殺された山小屋に入った時は、女は、男に写真を撮られるのを嫌がって写真を握りつぶした。それが車に落ちていた写真。


 男は恋人である女を殺した。ドライブの途中イキナリ女が別れ話を持ち出して、逆上した男が発作的に首を絞めて穴の上に放置した。動機と犯行は単純でごくごくありふれたもの。異様なのが、殺した女の顔を、さっきまでその女を撮っていたポラロイドカメラで毎日映すと言う行為を繰り返す。そこだけ聞くと、男がそう言う趣味の人物なのかと思うだろうが、理由はもっと複雑だった。


 映画では意味不明だった描写が、小説では詳しく説明されていて、とてもよく解かった。映像で、男の心理描写だけで内容を把握させるのは難しかったのだろう。観る側の理解力不足だったとは思えない。もともと元になった映画そのものが訳の分からない作品らしいから、わざとそう言う作りにしたのかもしれない。
 
 死んでる女から電話があり、男の幻聴か? 幻想か? それとも女は不老不死の化け物か? と思わせる紛らわしいシーンがあったせいだろう。それにしても、ベッドで襲ってくる女に牙が見えて吸血鬼か? と思わせるシーンはいらんかったと思う。

 男は女を愛していた。二人で一緒に観に行った映画ZOO』男の隣で、女は真剣な様子で見ていたものだった。生物が腐敗していく様子を撮って、軽快なリズムに乗せて、早回しで再生してゆく映像。
 
 映画の中の女は、とても会社勤めしているとは思えないほどエキセントリックで人間離れした、つかみどころのない人間に感じた。
 女と一緒に撮ったシマウマに何かスッゴイ意味があるのかな? と思っていたら、その後なんにもなかった。小説だと男の心理の象徴だったのかな? と思う。「明日こそ自首しに行こう! いや、きっと出来るわけがない」哀川翔主演の『ゼブラーマン』のように、「はっきり白黒つけてみせましょ!」つけれないだろうって意味だったんだろうか? 

 動物園でシマウマより象徴的に描かれているのが、コンクリートの狭い檻の中を、何故か精力的にグルグル回っている一匹の醜い猿。この辺が『SEVEN ROOMS』と繋がるところ。『SEVEN ROOMS』は理由も知らされず強制的に入れられ自分で出ることは不可能な状況だったが、男は自分から檻の中に入って出られるのに出られない状況、理由は自分しか知らない。こっちの方がリアルだ。男は、行きずりのゴロツキに刺されることは怖くないが、彼女を殺したのが自分だと言うことが認めれず、自首することは怖くて出来ない。


 この男が気の毒なのは、彼は二重人格でも記憶障害でもなく、演じている最中も、自分が演じているってことを自覚しているところだ。こんな毎日もうやめて楽になりたいと思う、でもやめれない男の苦悩が描かれていたのだ。次の日、また自分が発見出来るように写真を撮って置くのは、自分の罪を忘れないように、自首するように仕掛けた、暗示だった。せっかくの暗示も、次の日には効かなくなっている。いや、次の日こそ自首することを願いながら写真を置く時から、明日もやっぱり駄目だろうと解かっている。解かった上で、人前でも一人の時でも、行方不明の恋人を探し続ける憐れな男を、毎日演じ続けなければいけない。


 全ては身から出た錆とも言えるが、私には充分同情できる主人公だった。共感すらしたかもしれない。この話もラストには救われそうで良かった。心も身体も。彼女との記憶がよみがえる動物園が閉鎖したと言う物理的な理由で、助手席に座る彼女の幻影も見えなくなる。
『SEVEN ROOMS』では、少なくとも姉の魂は救われたと思う。脱出出来た弟の魂はどうかと思うが……
ZOO』を観た後の私もどんな形でも、救われたいと願う。


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tag : 乙一 小説 ZOO 映画 オムニバス 腐敗 イギリス 感想 白いページ

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 読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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