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乙一『SEVEN ROOMS』感想

 これぞ究極の不条理! の世界。何故? どうして、私を? の問い掛けに、女性達を閉じ込めた犯人は一切答えてくれない。犯人が与えてくれたのは、灰色のコンクリートで覆われた、天井には薄暗い裸電球一つ。壁には取っ手の無いドア。床には、汚水が流れる狭い溝があり、それをトイレ代わりにしろとばかりに、蓋も無く剥き出しのまま悪臭を放っている部屋。一日一枚の食パンと皿に盛られる水だけ。
 
 映画を観た時も小説を読んだ時も、気持ち悪くなる話だった。でも気持ち悪いだけじゃなかった、最後に泣かされる。

以下↓ ネタバレあり。






 映画の姉は凄く年上に見えた。我が儘そうで、小学生の弟を高圧的に扱き使い、きっといざとなったら、弟を犠牲にするんだろうな、と思わせる位イヤな人物に映っていた。それが却って落差のあるラストの姉の行動で、あ然とさせられたものだ。

 小説の姉は、もうじき高校生だが、始めっから最後まで思慮深く思いやりのある人物として描かれていたように感じた。弟に、溝に入って欲しいと、命令では無くお願いだった。映像を先に観ていても、弟が溝に初めて潜るシーンは、やっぱり文章でも気持ち悪い。小柄な弟なら通れるかもしれないだけで、先がどんなになっているか解からない。息が苦しくなる前に顔を上げれなければ戻るタイミングを計れなかったら、どうしようって想像するだけで地獄の一丁目に居るような絶望的な気分になった。弟の足首に靴ひもを巻き服とベルト繋げ、途中でつかえたら姉が引っ張り上げれるように対策はとってあったにしても。

 この子役の子、嫌だろうな。いっくら作り物と言っても、排水溝を思わせる汚れ設定。学校で苛められたりしないんだろうか? リアルで不安になるような映像でしたね。この話、『陽だまりの詩』のようにアニメじゃ、この恐怖臨場感が出せなかったんだろうな。『SO-far 』の子役には、こう言うオファーは来なかったんだろうな。成長した俳優さんにも居るよね、キレイな役しか受けない人と、ヨゴレ役が当たり前みたいな人。キレイな役しか受けれない人は、本人の意志よりスポンサーの意向が強いからだと、最近知りました。それが昔に比べて映像が面白く無くなった原因じゃないかと。

 閑話休題。

 閉じ込められて二日目、姉弟の部屋を含めて同じような部屋が七つあり、空室が一つ後はそれぞれ一人ずつ女性が入っている。姉弟の部屋はちょうど真ん中四番目で、上流から番号を振って6番目は空き室であり、そして一番下流の7番目の女性は、溝に細かく千切られた死体が毎日午後六時に流されてくると話す。しかし、その日の六時に姉弟は溝にそれらしい物を見ない。
 三日目、空き室だった6番目には新顔が入っており、7番目の部屋には誰も居ない。室内は昨日よりキレイになっている。5番目から上流の女性達も死体を見ていないと言う。そして、上流から一番目の女性は今日で六日目だと言う。二番目の女性が五日目、三番目の女性が四日目、五番目の女性は二日目。弟から各部屋の女性の話を聞いて、姉は気づく、今日殺されるのは一番目の部屋の女性だと。

 勇気ある弟と、的確に指示した姉が分析した結果、犯人は毎日一人ずつ、六日目の午後六時に殺していくと言うことを把握する。ドアは外側からは閂が掛けられることを、やはり弟がギリギリ犯人の犯行現場を見て確認する。
 ジェイソンはとても几帳面な性格のようだ。殺害後、遺体を細かく切り溝に流すと石鹸水で室内を清掃する。おそらくデッキブラシのような物を使って(多分これも電動)、血と肉片を天井から取っ手の無い壁床と洗い流していたのだろう。その汚水もそのまま溝に流せる。なんて犯人にとって合理的に出来てるんだ! と感心した。


 いよいよ自分達の番だと言う時、姉は弟を守るとアピールし演技で、犯人の注意を自分だけに向けさせる。その隙に脱出した弟が閂を掛けた時、腕を切られた姉がつんざくような笑いで勝利宣言する。絶体絶命の中でとった姉の見事としか言いようのない秘策に、驚愕。人間そこまで出来るものなのか。被害者にとって救いようのない拉致監禁殺害設定と、イレギュラーで入れられた姉弟の反撃が、正反対の心理から行われたことが、痛快とも言る。 犯人から与えられた恐怖孤独絶望を、姉は希望に変えた。そこがこの作品の素晴らしいところじゃないかと思う。


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 読書感想が主です。探偵が登場する本格ミステリー好き。
と言っても、難しいことは解らないのでトリックにはさほど関心無く、登場人物のやりとりを見るのが好きなだけです。

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